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2024.06.15 その他

日台フォーラム開催報告:「日本から見た台湾調査権の未来」

2024年5月30日、日台オンラインフォーラムを開催しました。今回は、台湾で大きな問題となっている「国会改革法案」について取り上げました。開催報告については下記を御覧ください。

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日台国会監督組織シリーズフォーラム―「日本から見た台湾調査権の未来」

文責/公民監督国会連盟 国際部 張君瑋

 

立法院は現在5月国会改革法案を進める過程で、議事手続き及び一部の条文修正において争議があり、2014年のひまわり運動以来最大規模の市民デモが起こった。これにより、公民監督国会連盟は特別に日本の国会監督団体万年野党を招き、オンラインフォーラムを開催し、日本国会の国政調査権の内容と運用方法を理解することで、台湾の国会調査権の未来と可能性についてさらに議論することを目指しています。

 

会議ではまず公督盟 副執行長 甘順基氏が簡単に今回の国会改革法案の主要な論点について説明した。台湾では国会調査権に関する議論と提議は早くも1993年に、ある立法委員の提出草案から始まった。しかし長いこと政党や政治的考慮、立法院の国会任期が続かない等多くの要因により、類似の法案はいつも立法審査に入ることなく詳細が討論されることはなかった。今年に入り、国民党、民衆党の野党多数で、かなり短時間で《立法院職權行使法》の修正案が第三読会を通過したが、審議過程では協議が不足し、実質的な議論はなされない中で第二読会を通過し、更に手続きを進める中で重大な問題が発生し、一部民衆の疑問と不満を引き起こした。多くの法学者も通過した法案について、憲法に違反している可能性があることを指摘している。まとめると、今回の修正法案の重要な論点は以下の通りである。

 

1,調査権の行使:公民の他にも、法人、人民や団体または一般関係人も証人として規定し、もし出席を拒否し、資料を隠匿した場合、罰則が課される。(しかし)関連する詳細が明瞭でない中で、一般市民は立法院の調査を受けることを心配している。

 

2,反質問権:現在の台湾では反質問の行為及び様態へ対する明確な法律概念もしくは定義が存在していない。その他秘密事項については立法委員が認定し、個別の立法に調査権を付与する可能性もあり、立法委員の権力を拡大することを認めることにもなる。

 

3,権力分立への違反:調査資料は司法審判中の案件と監察院で調査中の案件にも及び、監察院は権力分立に関する憲法違反に関係している可能性があると提出している。

 

4,証人保障についても不足しており、文書提出の拒絶また証言提供の拒絶などの細部についても完備されていない。

 

以上の法案修正の争議について、公監盟は日本の国政調査権について以下のいくつかの質問を提出し、検討と(議論の)交流を希望した。質問は日本国政調査権が汚職の追求の助けになるか?国政調査権が乱用されることはあるか、政治報復の手段になるか?日本は反質問権に関する処罰規定はあるか?日本では調査権の発動について何か制限はあるか?また証人保障に関する方法もしくは法規は存在するか?日本の国会では国政調査権の行使について専業の部門の助けは存在するか?についてである。

 

日本の政策工房 客員研究員の黒澤善行氏はまず簡単に日本の国政調査権の概要について紹介。日本の国政調査権は憲法62条に「両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と規定。憲法に規定する調査権の主体は衆議院・参議院だが、実際の運用では各院の委員会(常任委員会、特別委員会)において進められ、また各委員会の構成は各政党所属議員数により分配される。

 

国政調査権の行使の方法は2種類ある。1つ目は法的拘束力がある<議院証言法>。証人に出席と質問を要求することができ、偽証罪の他、欠席、宣誓の拒否、証言の拒否に対して罰則を設けている。また文書、記録などの提供を要求し、提出しないものには罰則がある。しかし証言者本人もしくは配偶者などが刑事事件で有罪判決を受ける可能性がある場合、拒否することができる。(議院証言法第4条)

2つ目は法的拘束力がない<国会法等>。報告、文書、記録などの提出要求(国会法第104条);大臣などに説明及び質問を聴取できる(国会法第71条、第72);参考人の出席及び意見を求めることができる(国会法第106条、衆議院規則第85条第2項、参議院規則第186条);委員派遣(国会法第103条、衆議院規則第55条、参議院規則第180条第2項)。

 

日本の国政調査権は立法権、外交及び財政に関する統制権を含む行政監督権、司法監督権などを含み、国会の権能の範囲内であれば行使可能であるが、行政権や司法権(その他国家機関の権能)には影響を及ぼすことはない。そのため、政治家もしくは官僚の汚職・腐敗などが国政調査の範囲内に含まれます。調査権は基本的人権を侵害してはならず(例えば、

 

思想、政治、信仰、通信の秘密など)、国政調査権を行使する際、証人の自証拒否に関する権利、実際の法律手段及び刑事司法手段を超えてはならない。(例えば、調査、住宅への調整侵入、家宅捜索、文書の差し押さえ、勾留など)

 

国政調査権の行使の手続きについて、多数党が政治的意図による乱用を防ぐため、慣例上、証人喚問の決定には委員会での全会一致を「「必要とする。調査権の実際の運営上で大切なのは、常設委員会及び特別委員会での運用であり、国会会期内、会期外いずれも調査権を行使できる。委員派遣については、一般的には国会会期外での行使が多い。

 

日本の国政調査権は政権与党の腐敗に対し有効かどうか等を含む公督盟の提出した質問に対して、実際このような調査は日本でしばしば中途半端に終わり、十分な効果を発揮していると言うのは難しい。調査権は政治報復の手段になるか?日本では政権与党と野党による政治的駆け引きの場に時々なることが問題であって、衝突や報復に発展することはありません。むしろ、準備調査時、調査権の機能は薄れてしまい、新たに深く調査することは難しい状況です。次に、証人が調査に協力しない場合の罪や懲罰について、証人が公務員もしくは民間人が明らかに協力しない場合や、偽証した場合には罰則が適用されます。ただまず、証人の偽証を証明する必要があり、多くの細かな項目と攻防が伴います。もし証人が言葉巧みに問題を回避する等しても、日本の法律では明確な制裁規定はありません。日本国会国政調査権の行使にあたって専門スタッフなどが存在するかについては、日本の国会調査権は基本的には(国会職員の)職務の範囲内で行われており、当該委員会の国会職員たちがそれに従事しています。国会外には、明確な支援組織はありません。

 

Q&Aにおいて、参加者が黒澤さんに日本の国政調査権の効果について点数を聞いてみた。もし最低1点~最高10点で評価した場合、黒澤さんは法律強制力を持っていたとして、効果はおおよそたった2点と評価した。また参加者が日本の国政調査権は乱用され政治的な敵の攻撃や、民間企業への攻撃に乱用されることがあるか?国会調査権は一国会の会期内で大体何度発動されるか、乱用される可能性があるか?と聞いた。黒澤さんは日本において、国政調査権はあまりきちんと活用されていない、そのため基本的には政敵への攻撃や圧迫に使われることはない。発動頻度については、状況やテーマにおいて変わり、明確な頻度はない。万年野党理事の原英史氏は、日本と台湾の国会の制度は全く違う、日本は議院内閣制のため、行政権が相当強く、国会議員が質問を通して行政権を動かすことは難しいと補足しました。

他にも参加者からは機密事項の認定についても質問がなされました。日本では行政と立法が機密事項の認定について衝突が生じたとき、司法的な解決は未整備であり、行政の決定が採用されます。しかしこれが国家機密と言うには厳格な手続きが必要であり、日本の制度はかなり整っています。日本では50年を超えた秘密については積極的に公開する必要があるという声があるが、現在その部分については法律では規定されていない。

また証人の召喚については、各党派内の全会一致が必要であるが、しかし実際上は全会一致を得るのは難しい。そのため、調査権の提出には法律の強制力と法律によらない強制手段が必要であり、一般的には非強制的な効力があるが、質問的効果の高い調査(参考人招致)が実施されることが多いです。現時点で言えば、一般的にはやはり野党が調査権を発動させることが多いです。

 

まとめると、日本と台湾の憲政体制は大きく違いがあるため、日本の制度をそのまま適用するのは難しい。しかし国政調査権の全体的な原理原則、証人の保護制度、調査権の行使範囲等について、日本には多くの詳細な規定があります。台湾が今後国会調査権を実行する場合、より多くの細かな議論と規則の制定が必要となるでしょう。

 

 

 

※今回のフォーラムは、日中通訳が用意され、関心のある50名の市民が参加しました。

 

 

 

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